感想『北澤美術館所蔵 ルネ・ラリックの香水瓶 —アール・デコ、香りと装いの美—』
アール・デコ好きなら避けては通れないルネ・ラリック。そういや、オリエント急行の内装も彼でしたねー。松濤美術館は何度か前を通っていたものの、ものすごい行きたい企画がなかったので今回初めて中に入ったけど、とても素晴らしい建物で。特にモダンなファサードはこの企画にぴったりで、気分が盛り上がります。
貴族御用からブルジョア向けへ
ジュエラーとしても有名だったラリックがガラスを手がけるようになったのはフランソワ・コティに依頼されたことがきっかけです。どうでもいいけど、私が初めて(祖母の化粧台から失敬して)つけた香水はコティのロリガンでした。ラリックのデザインした香水瓶がそれまでの容器としての香水瓶から、香りのビジュアルイメージを具現化したパッケージとしても魅力的で新鮮に映ったと想像するだけでうっとり。おそらく、それまでオーダーメイドだった香水が、一般に…と言っても富裕層向けに販売されるタイミングだったのかも。この辺の詳しい資料が欲しいわー
collier décor divers MOINEAUX TÊTE LEVÉE 頭を上げた雀 雀モチーフの同一パーツを放射状に並べたネックレス。この展示では香水瓶がメインですが、いくつかガラスのアクセサリーもありました。彼のジュエリーを箱根のラリック美術館で見ていたので、もちろんデザインやモチーフに緻密な仕上げなど共通点はあるのですが、一点物と量産品のはっきりとした違いがありました。
ここでもやっぱり日本の影響
boîte ronde å poudre POMMIER DU JAPON 円形パウダーケース『日本のりんごの木』、Broche petite ronde CABOCHON POMMIER DU JAPON 円形ブローチ『カボッション日本のりんごの木』日本のりんごとは木瓜のことだそうで、どちらの作品もとても日本風味というか。本当に日本ブームだったんですねー
基本的には展示ケースのスペーシングも高さもみんなが見やすいように配慮されていて素晴らしかったけど、作品名を掲示する場合は是非とも原題を付記していただきたく。日本のりんごの木って確かに直訳だけど本当にそうなのかは原文読まないとわからないじゃないですかー(読んだらわかるとは言ってない)
図録も素晴らしい!
ルネ・ラリックさんは大好きなので内容が良かったら図録買ってもいいかなーでも置き場所がなーとか思ってたのですが。会場内でチラ見のつもりがガッツリ読んじゃっても絶対買うってなったぐらい素晴らしい内容で。写真が良い・資料が良い・解説が良い、そしてダラダラ無駄に長くない。とはいえ、やっぱり置き場には大変困っているのでそろそろ図録も電子書籍化をですね。
『Murder on the Orient Express/オリエント急行殺人事件』を観ました※ネタバレ?在中
世紀のネタばれ映画
ネタばれっていうか名作すぎてみんな結末はご存じでしょうし。名前と顔が一致しないわたしでもお顔を知ってる豪華な俳優陣。中でもセルゲイ・ポルーニンが出てたことにびっくりしましたが、なんて贅沢な使い方なの…世界一優雅な野獣よ?
エンドロール観て、ジョニー・デップってどこに出てたっけ?ってなったのはまあ、お約束ってことで。
オリエント急行がすごい
イスタンブールの駅のセットを実際に作ったんですね。箱根のラリック美術館に展示されているワゴン・リ社のプルマンはコート・ダジュール急行なので、NIOEとは細部が違うんでしょうけど、実物見てるせいもあって、アール・デコ後期の当時を再現されてる映像を観ると感激も一入でした。
イスタンブールの駅も凄かったけど、ゴミゴミとした下町を華やかなオリエント急行が走っていくシーンはとても壮観でした。子どもだけじゃなく街の人たちが手を振っていたのはやっぱり珍しかったのかな。どう見ても知り合いが乗っている風ではなかったので…
『 Final Portrait/ジャコメッティ 最後の肖像』観ました
ギリ到着だったので、観終わってからポスター撮るつもりだったのに、最終上映時間だったせいかポスターが…ない。
愛するナイジェルことスタンリー・トゥッチ監督作品ってことで観にいったので、そもそも彼の作品自体うろ覚えっていうかー実存主義?シュルレアリスム以降の難しい芸術苦手なのでー
アーミー・ハマーさんイケメン
お育ちの良いゲイ感がすげーなーと思ってたら、実際ジェイムズ・ロードさんはそうなんですね?あまりそういう描写はなかったような気がする。娼婦にもジャコメッティの妻にも興味がなさそうだけど、まあ巨匠の妻とか愛人に粉かけないのはエチケットよねーぐらいにしか思っていなかったので、後でググってあらそうなのみたいな。
感想『パリ♥グラフィック—ロートレックとアートになった版画・ポスター展』
会期終了直前に慌てて行きましてその二。厳密に言うと私の好きな時代(Les Années Folles)とはずれるんですが、アール・デコはBelle Époque期のアール・ヌーボーを無視して語れるものではないので…やはりチェックしておかねばと。
版画とポスター
L'Estampe et l'Affiche 日本語訳するとまあ、素っ気ないことこの上ないタイトルですが初っ端に展示されたポスター娘と版画女史の対決のような構図大好きです。この展示考えた人天才。
みどころにも掲げてある、“From Elite to the Street” を象徴している気がします。私だけかもですが、このあとの展示の流れを感覚的に掴めたのはこの作品のおかげ。
ロートレックはとてもポスター向き
亀倉「ポスターの原点というと、よくロートレックの名前が出るだろう。僕はそれ、ぜんぜん反対なんだ。あれは絵描きの仕事だよ。ポスターの原点なんかじゃない。」木村(恒久)「ポスターの原点は、構成主義ですね。基本的にはそれしかない。あれで、ベル・アポックから離れましたからね。」P375
— 亀倉雄策bot (@Y_kamekura_bot) January 7, 2018
絵かきのかいたものがポスターの原点じゃないというのは、作家の態度が違うんだよね。カッサンドルは、あくまでデザイナーとして作っている。ムーランルージュのポスターとは、そこのところが決定的に違うんだな。つまり、デザイナーは伝達の技術者であって、芸術家じゃない。P376
— 亀倉雄策bot (@Y_kamekura_bot) January 7, 2018
亀倉雄策先生のお言葉を淡々とつぶやき続けてくださるbotさんなので、この引用は孫引き(犯罪)になるのだろうか…今度原典探して読むのでちょっと待ってください。
この引用が正しい前提ですが、亀倉先生のロートレックは絵描きに否やはないものの、それでもやっぱりロートレックは(私は)ポスター向きだなと。理由は寄ったときに魅力が半減するから。ポスターは意図的に描線を減らしてるけど、絵画も遠くからとかサムネイルで細部が分からない状態ではいいけど…なとこがポスター的というか、今でいう屋上看板用画像は解像度をぐっと落とすとか階調を減らすの(ポスタリゼーション!)に似ているというか。
構成“主義”ではないのかもしれないけど、十分に構成で魅せる描き方がポスターっぽいなと。
元フォントマニアとしては
最初から気になったので注目しつつ観てたんですが、時代が進むにつれ描き文字がレタリングに、またそれが上手く読みやすくなっていくのが面白くて。昨年春にカッサンドル展も行ったんですが、もちろん当たり前だけど地続きなんだなと実感。
フォントを好きになってよかった!元DTPオペレーターです!的な。
ちょっとしたおまけがお得感
the series Suite de paysages シャルル・マリー=デュラックの風景画2点の枠外にそれぞれの景色にあわせた線画が描いてあってとても得した気分。
クリスチャン羨ましい
Postcards La marche à l'étoile 一見私にはただの夜景を描いた一組のポストカードだけど、よく見ると磔シーンがあって。キリストの誕生から復活までを描いた連作なんだなと気づくにはプレセピオとか御ミサのこども劇とか物心つくかどうかのタイミングで日常にそのシーンが散りばめられてないと。
上京してからこっち、美術館巡りや映画鑑賞に付き合ってくれる友人がカソリック(敬虔ではない)教徒なので、ヨーロッパ・アメリカ系の文化を理解するのにキリスト教の基礎知識必須だと痛感します。
一応、宗教学も教養としては受講したし関連書籍なんかも読んだけど、生活に密着した宗教上の常識は…日本で実感することはとても難しいので。
ヴァロットンいいわー、え?ラブルール!
同じ三菱一号館美術館で開催されたヴァロットンの企画展に来た時ときもそう思ったんですが、同時代のボナールやロートレックやモーリス・ドニの色鮮やかさに負けてないというか、並べると余計に私は目を奪われてしまい。ふと似た雰囲気の連作も彼の作品と思いきや、アール・デコ時代の(作品しか知らなかった)版画家ジャン=エミール・ラブルールのthe series Toilettesだったり。
[課題]アカデミー・ジュリアンとナビ派はちゃんと調べておこう(たぶん好きの源流な気がする)
感想『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』
会期終了直前に慌てて行きまして。本当は映画「ゴッホ 最期の手紙」を観てすぐに行きたかったんだけど、まあ結局あんまり関連性がなかったというか。
下手くそかゴッホ
展覧会でのお気に入り作品について書くのは決めていたので、すごくすごく頑張って好きになれそうな作品を探したんだけど全く見つけられず。
日本初公開の作品も数点あるってことだけど、お待ちかね!っていうよりかは、まあわざわざ持ってこなくてもよかったよね的な。
もうちょっと事前に日本との関連性を重要視した展覧会ってのを私が理解しておくべきだったんでしょう。彼が後の名画を生み出すにあたっていろんな試行錯誤があって、その中で日本の浮世絵に嵌った時期があったことや彼にとってのアルル(=日本…か?)がユートピアだったことを実感する資料はすっごいあったのでゴッホマニア向けの展覧会だったのかと。
もちろん、たぶん好きな画家の一人ではあるし『夜のカフェテラス』とか『ローヌ川の星月夜』なんかは“ゴッホの”って付けなくても好きな作品たちであることは変わらないのだけど。あ、ちなみに有名すぎる『星月夜』『オーヴェルの教会』はなんかしんどくて無理です。
日本人はゴッホが大好き
というか、自分たちが大好きなゴッホも日本が大好きだった!相思相愛!日本すごい!てことなのかしら。
いろんな画家さんたちがゴッホ終焉の地オーヴェールを訪ねていて、佐伯祐三の描いた『オーヴェルの教会』は初めて実物を見たけれど、むしろゴッホのそれより好きだと感じたし、ゴッホの描いた浮世絵もどきなんかより全然作品単体としての価値があるというか、好きです。
あと、ロートレックの『ディヴァン・ジャポネ』も展示されていて、リトグラフだからかこちらの方がよっぽど浮世絵感があるというか。
Kingsman: The Golden Circle 観ました※ネタばれ在中
アクション映画を知らない私でも楽しい
いやマジで。私のアクション映画を知らない度合いは、『The Hateful Eight』をcakesの映画レビューの一文だけを読んで観ようと決めた上に、タランティーノ作品にわざわざ付けられた“血みどろ”に「多少の流血は平気だしイケるイケる」と思った点で説明できるかと。
このロッジをふたつに分けるというのはどうだろう。北軍側と、南軍側にだ。このディナーテーブルは緩衝地帯。あのバーはジョージア州で、暖炉の前はフィラデルフィア
『ヘイトフル・エイト』 血みどろの「アメリカごっこ」|およそ120分の祝祭 最新映画レビュー|伊藤聡|cakes(ケイクス)(有料記事です)
……後半、凄いトマト祭りでしたよね。
私はものごっついスーツ好きなので、サヴィル・ロウのテイラーが舞台という情報のみで第1作を観たわけですが。うん、でも何も考えずに(もちろん分かる人には色々オマージュとか文化的背景とかあるんでしょうけど)楽しめる作品だったので、第2作も楽しく観ました。
前作の登場人物をきちんと覚えていなかったので、チャーリーって誰…?状態だったけど、ストーリー的には覚えてなくても(多分)問題なかったし。
とは言え前作のスタイリッシュさがステイツマンのせいで薄まったのは遺憾です。遺憾ですとも。
目がまわるので座席は後ろの方推奨
どうしても公開初日に観たかったのにチケット予約に出遅れてしまい、前から2列目というライブなら踊っちゃう席しか取れず。…ハンバーグの前に気持ち悪くなってた私。
企画中の第3作が公開の暁には後ろの席を取ろうと心に誓うのでした。
どうやらインテリハゲ眼鏡好きらしい
……バグパイプでの『Country Roads』流れたときにフラグに気付くべきだったんでしょうね…ゔゔ…Merlin
もちろんストーリー的に必要なフックではあるんですよ、あるんだけど、エグジーの天然ちゃんっぷりにイラっとしてしまう。
多少ならシナリオに無理があってもいい。だからぜひとも第3作で復活していただきたく。